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精工舎 エムパイア(新)

Empireface

時計通の人からは「まだ持ってなかったんですか」とか言われてしまいそうなアイテムです。
すいません、駆け出しです。
上級機扱いだったエキセレント、ライト、ナルダン型などは持っているんですが、ある意味会社の力量を最もよく表す、普及機に手を出していませんでした。
実は「精工舎の懐中といったらコレ」の鉄道用19セイコー(国鉄・私鉄の運行をささえた傑作機)も持ってません。民間用の19セイコーは持ってますけど、時計師に見せたら「ガッチャです」と言われました。まあ19セイコーは動けばいいや。
特徴あるセコンドセッティング(竜頭を引いてもその瞬間には秒針が止まらず、0まで行って止まる。時期によってついてたりついてなかったりする)の、いいのがあったら欲しいです。
まあ、とにかく。

Empiremove

今回は精工舎エムパイア。エムパイアは上記の通り普及機として作られたらしく、なかでも今回手に入れたのは後期型(大正末期から昭和初期に生産されたタイプ)。
中の機械は状態はよさそうですが、やはり装飾や凝った機構はひかえめ。心臓部であるテンプ回りも、かなり控えめなつくりになっています。
さてここでヘリクツの話。

Empiretempu

機械式時計は要するにバネ振り子を使って時を刻みます。
このため心臓部はうずまき状の「ひげぜんまい」(バネ)と円環型の「テンプ(振り子)」で構成されるのですが、例えば温度があがるとテンプは環なので広がります。ひげぜんまいは伸びます。振り子が長くなってばね定数がさがるので当然遅れます。
だめじゃん。
このため円環形のテンプを切断し、なおかつテンプを膨張率の違う金属を貼り合わせて(バイメタル)温度上昇とともに内側を向くようにしたバイメタル切りテンプなどが工夫されました。バイメタル切りテンプや微動緩急装置といった複雑な造形は目をも楽しませてくれますが、この機械はそれら機構がまったく無く、実にシンプルなものです。彫刻による装飾も、わずかにコート・ド・ジュネーブ(平行波形模様)が施されているだけです。
ただし、この時計のヒゲゼンマイにはエリンバー合金が使われています。
エリンバーというのは
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%89%E3%82%A5%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%A0
温度変化によるバネ定数の変化の少ない金属、というとなんのこっちゃですが、まあとにかく温度変化による狂いが小さい材料を使っています。当時の広告を見るとテンプもエリンバーを使っていると謡っていますがインバーの間違いじゃないかと思います。
インバーは温度による体積変化の少ない金属で、インバーをテンプに、エリンバーをヒゲゼンマイに使うことで時計の温度変化による狂いを激減させることができます。
これがどれくらい画期的だったかというと。
発明者がノーベル賞もらってます。
ということで、実はこの時計はバイメタル切りテンプなどという「遅れた機構」は必要ないのです。
とはいえそれは当時の話。今見るとやっぱりシンプルに感じます。
ともかく歴史の1ページとして大切にしようと思います。

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