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リュックサック計画

「荷物を入れる袋」は体に合わないとどうも安心しない。かくてリュックサックだの「リュックサックのような何か(後述)」だのが大量に溜まることになる。とはいえリュックサックというのはああ見えて高度に専門化されているのだ。筆者の馴染んでいるリュックの傾向としては
(1)登山用パック
 比較的ニュートラルに頑丈 歩行前提で縦に長い
(2)自転車用パック
 超軽量で見かけの割には入る(が、絶対的に小さい)。大抵ビニールによる完全防水
 ハイドレーションシステム(すぐのめるチューブ付き水タンク)を装備できるものが多い
 脇腹・腰骨で支えるものも多い(歩行に不適だがペダリングは快適)。
(3)軍用パック
 無闇矢鱈と頑丈
 着脱(特に脱)が容易
 イラクじゃハイドレーションシステムが常識(背中のキャメルバッグと書かれた袋は水タンクだ)
 旧型は無闇に空間がでかい
 作戦の長短、敵勢力等にあわせ増減が容易(後述)

という印象を持っている。
筆者は軍用または軍用スピンオフのものを好む。
メリットの一つは着脱が容易なことだ。昨今の軍人さんはクソ暑いイラクでゴチャゴチャ重ね着しているが、実は要所はワンタッチバックルやファスナーで要所が留めてありかなりの装備を外せる(上記の写真でもキャメルバッグや銃のスリングに付いてるね)。これが出来ないと上陸艇の前蓋が開いた瞬間に機銃掃射モロに食らって慌てて舷側から飛び込んだはいいが装備が海中の障害物にひっかかって上陸直前で溺死という演出が待っている。さすがスピルバーグ容赦ねーぜ。
意外かもしれないが軍用モデルのもう一つのメリットは頑丈でデカイだけでなく自由度が高いことだ。ンなバカなと思うだろうが例えば一時期の米ライフル分隊は10人でM16アサルトライフル、M203(M16+グレネードランチャー)、M249(軽機関銃、いわゆるミニミ)、対戦車兵器だのなんだのかんだのと持っていて、一々専用ベストとかリュックとか作ってたら戦争が終わってしまう。それでもアメリカは勝つが。
で、なんもついてない服やベルトに弾倉ポーチを吊り下げてったらいんじゃね?となったようだ。このへん筆者よくしらんので誰か教えてほしい。旧型のアリスシステムは、各種装備に縫い付けられた・着用したベルトに金属のクリップ(アリスクリップ)を使ってポーチ類をブラ下げていた。しかし鉄の塊だから重い。グラつく。なにより錆びる。
というわけでMOLLE(MOdular Lightweight Load-carrying Equipment)だのSPEARだのというシステムを作った。どうも一般兵用がMOLLEらしい。MOLLEシステムはベストだのリュックサックだのいろいろ定めているが、新型の特徴はPALS(Pocket Attachment Ladder System)ウェビング、ナイロン(だと思う)の帯が無闇やたらと縫い付けてあることらしい。PALSウェビング自体は本当にナイロンの帯を等間隔で縫い付けたもので、これにポーチを差し込み固定していく。これが実に良くできていて、正しく装備すればまるでそこに最初からあったように付く。しかもPALSウェビングがベストからリュックサックまでくっついているという事は、幅とか高さとかの制約さえクリアできればベスト用のポーチをリュックにつけたりベルトに付けたり自由自在だ(一応シェフのおすすめランチメニューは公開されておりメーカーがビデオ/DVDで頒布しているが、イラク戦争写真見る限りあまり真面目にやってる印象は受けない)。かくて米兵はシマウマ君と化す。彼の腹部のビミョーに色が間違ったポーチ群と、その間のシマシマに注目されたい。つまり彼の装備は全部PALSで付いているのだ。
もちろんこんなおいしい市場を逃がしたくはないがライセンスの壁があるので、パテント回避しつつPALSウェブにポーチを(ほぼPALS純正と同様に)固定できる軽量アタッチメントが作成された。これをMALICEクリップと呼ぶ。かくて軍用装備は価格・使い勝手自由自在のかつての自作パソコンのようなカスタマイズ市場となったのだ。
ファーストエイドポーチやマップポーチなどはともかく、ナルゲン(山屋がよく使う水筒)だのGarmin(民生用GPS)ポーチ、しまいにゃカラシニコフ用のポーチが販売されている始末。まあ、AKはアメリカ兵も重宝したらしい。

おさらいをしておこう。
MOLLE:
 ベストやプレートキャリア(防弾板入れ)、ベルトにリュックサック他装備の総称
 PALsを積極的に活用している。
PALS:
 MOLLE/SPEAR等に採用された、ポーチやらなにやらを服でもベルトでもリュックでも
 好きなように配置できまっせーなナイスな固定手法。旧型のアリスクリップも付く。
MALICE:
 パテント回避しながらPALS(及び腰ベルト)に製品固定できるようにしたシステム、及びそのためのクリップ。プラスティック製で軽く再利用可能。永久固定するならタイラップのほうが安くて確実なのは秘密だヨ。

これら用語は混同されるだけ混同されきっており、どーみてもケッタイな製品がMOLLEコンパチとかいって売ってた場合はそれはPALsシステム対応またはMALICEを使ってPALSウェブに固定できるという意味であることが多い。ぶっちゃけPALS正規ポーチは高価でなかなか買えない(笑)。かくてちょっとカスタマイズするとMALICEクリップがなんか余ることになる。このへん自作繰り返すたびに無闇やたら増えるネジのようなもんである。

軍事技術はスピンオフを生む。自分の好むサプライヤーの一つがMaxpedition社である。これは携帯電話スロットやナルゲン用スロット、隠しの拳銃スロットを装備するなど、一般での(少々ワイルドな)運用を考慮した工夫をしており、台湾製造などで価格を下げている。しかし品質は軍用そのもので、汗や泥や血液や、もっとイヤな液状物質の浸透も防ぐ頑強な構造の上MALICEや独自の工夫でPALSに接続可能としている。実際PMC(軍事請負会社)等では重宝しているようだ。
旧製品ではベルトクリップのみのものがあるが、MALICE及びPALSはベルトにもきっちり固定可能なので、両者あれば「絶対に」MALICE/PALS対応品を選ぶべきである。
もう一つは寸法等互換をあえて捨てコンセプトだけ頂いたロー(中略)

ここで盟友ぬまにゃん氏がMaxpeditionの素晴らしさ及び国内流通品のダメ出しを高らかに歌い上げトラックバックかけてくれることを期待しつつ以下次号。

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コメント

 はじめまして.
 消印所沢と申します.
 唐突に書き込みさせていただくご無礼をお許しください.


 さて,このたび拙作サイト「軍事板常見問題&良レス回収機構」におきまして,
Q&Aを作成する際に,貴ページを参考にさせていただきましたので,報告させていただきます.
http://mltr.ganriki.net/faq09b03.html#MOLLE


 引用の範囲にとどまっていると当方は考えますが,もし差支えがございますようでしたら,
遠慮なくお申し出いただければ幸いに存じます.


 それでは今後ともよろしくお願い申し上げます.
 草々

投稿: 消印所沢 | 2008年12月14日 (日) 23時39分

常見問題いつも参考にさせていただいています。
転載OKです。よろしくお願いします。

投稿: なかた | 2008年12月15日 (月) 03時33分

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